2020年10月刊行
2020年10月刊行
文化科学高等研究院出版局
文化科学高等研究院出版局ehescjapan.com
SONDEOS
山本哲士著作撰
103 21年8月20日発売
624頁
2970円(本体2700円+税)
国家は巨大な怪物ではない。
国家憎悪また国家愛は国家を過大評価している。
国家に実体はない。
国家は叡智性の図式である。
権力関係論から統治制論への飛躍をもって、安全・人口の「国家配備」論理から「国家の統治制化」をめぐるフーコー講義を丁寧に読み解く。
既存のマルクス主義的国家論を転換。
コロナ禍で、迷走する世界は、その統治性のなさを露出している。何をいったいなしているのか、統治性が不在の社会主義国や統治性が貧相な資本主義国家を根源から見直す書。
「生きること」への統治は、人口の統治制化と身体の規律化においてなされる「生政治」であり、社会を自然性化し、ホモ・エコノミクスを統治性と個人を結びつけるべく政治経済学=真理を創出し、「人間の振る舞い」を統治してきた。国家権力による支配・抑圧という粗野な国家論を転じる、画期的な書。
プロローグ:日本という全称・特称
「哲学者の政治的存在」と「言説の政治的存在」 対立項の形式を超える
Ⅰ 哲学地盤の転移:哲学設計の新原理
①章 非分離の哲学
近代の分離哲学
1非分離の技術
1 箸の技術:非分離の文化技術
箸の行為 箸の非分離技術化の歴史と儀礼化 忌み箸 箸のことわざ
2 非分離の技
見えないものは隠されていない 「合わす」という非分離
非分離の〈動き〉と創出 「技が決まる」という非分離
分離体系と非分離体系
2主客分離から主客非分離への認識論的切断
1 哲学表出として
デカルトの言説 マルクスの一元論 弁証法という虚構 自然の分離客体化 主客非分離への転移86
2 言語表出として88
非分離のランガージュ 「ひとつ」の意味 「間」の虚構 時間なき「時」 ◦「た」気分/気持ち/気色 ◦虫101 人生、人のあり方の表現
3 認識論的切断
「思う」と「考える」 自然・環境の非分離
自他非分離ではない 主客非分離である
分離思考による内部化 ●日本近世の分離・内部化
3非分離の理論生産閾
1 理論生産Ⅰの閾
実体と道具 「社会」の生産と労働 非分離の閾
2 理論生産Ⅱの閾
3 理論生産Ⅲの閾
②章 述語制の哲学
1 述語の技術
風呂敷の技術:述語制の文化技術 「包む」技術 日本絵画の述語技術 ◦朦朧体159
着物のしぼりと織のかすり 偶然の述語制 道具と述語技術162
◦道具と言語
2 述語の表現:言語の述語性から
1 いくつかの述語的な語法・表現の情緒性
「葉」と「葉っぱ」 述語のことば 述語的両義性 「物」の論理
述語的構文の原型
2 日本語の述語的言語の論理構造
①うなぎ文/こんにゃく文の論理
②「いる」と「ある」の述語的存在表現 ③三上章のピリオド越え
④盆栽型とクリスマスツリー型187
⑤神の目と虫の目 述語構造の諸要素
3 芸術における述語表現の世界
音楽の演奏における述語表現 音と色
モネの光:非分離技術による述語表出 赤いとあかるい
3 述語制の論理
述語的存在への哲学的契機 和辻哲郎の人間哲学/風土論の落とし穴
述語的存在 述語的存在と述語制
情動性:佐久間鼎Ⅰ 日本語の論理表現:佐久間鼎Ⅱ
述語制としての係助詞「ハ」、堤題の「ハ」
◦象は鼻が長い。 格助詞の述語性 述語制とランガージュ
4 述語的意志
罪の犯罪化 コンシアンス 意志論の本質閾
意志的なものと非意志的なものの逆転
西田の意志論 述語的進化論:今西錦司
◦今西・対・吉本:マルクス、エンゲルス、ダーウイン
心身非分離の述語意志 述語制の欠陥
③章 場所の哲学
1 場所の技術
下駄の文化技術 裸足の文化技術 場所の味と感覚 場所・対・空間
場所意志論への障碍 場所と場の混同
◦カント主義と科学論:技術論の壁
◦ローカリティとプレイス:場所の混同
2 場所のことば
1 物と場所の違い
物と場所の対立:久島茂 漢字の場所語2 いろは歌と「五十音図」
2 場所の日本語
「どこ」 「コソア」 来る 済みません:済むと澄むと住む 「
「ん」という音と文字 「ち」307 「つ」
3 場所の哲学へ
1 空間の制覇:西欧哲学/科学の空間言説化
◦デカルト 延長と隣接
◦ガッサンディからニュートンへ 絶対的空間=空虚の出現
◦ロック 延長される空間の統治
◦ライプニッツ 場所の位置化 ◦カント 位置の点化
2 日本の空間言説
◦遠西観象図説 ◦求力法論の訳言説
3 現代思想における「場所」
場所を前にして場所を見ないハイデガー
場所を見ていく現代思想 場所存在と述語存在
4 場所の述語意志 移動する場所
場所は資本である
1 場所の述語意志
場所と境界 逆対応 場所の哲学 場所は共同体ではない
2 古代的心性の場所
天つ神 国つ神:古代心性の場所 国魂の場所:くにぶりの歌
枕詞・歌枕の場所 坪井洋文の「クニブリ」
古事記の原初的場所空間 日本の神 場所の神 土着神・荒ぶる神:場所神 絶対無の場所 内臓系とこころと場所:三木成夫
3 場所は動く
パブリックな場所 場所こころと生命の指標 場所とジェンダー
小括:日田の場所と猿田彦 場所の構造的構成
✿三つの原理における総括
Ⅱ 非自己の哲学閾
④章 非自己の哲学
非自己の界閾
1 自己の哲学 私の哲学
現代日本における「私」 主体と主語の論理の落とし穴
「について」と人称 「至上なる」主体
近代日本の自己と「天」 日本における自己の哲学の完成態
2 自意識の文学・批評に潜む非自己
1 小林秀雄という哲学的出来事
◦小林秀雄における自意識を否定する自意識 ◦小林の「私小説論」
2 私小説の哲学
◦私小説 ◦安藤宏の自意識文学論
非自己の大海:太宰治「風の便り」を範型に
3 主体性論争における主体・主語の論理
梅本克己 マルクス哲学と大学闘争
3 非自己の述語性と場所
1 自から
おのずからの場所 近世における「自」 一人称の発想
2 自然(じねん)
「もの」とムスヒ 主格言表の述語制
4 非自己の実際領域と理論閾
非自己の実際領域 ①神様が見ている習俗感覚
②非自己と自己表出:もうひとつの視線
③認知症における非自己 ④恋愛の非自己
非自己の理論閾 非自己の技術閾 非自己の行為閾 非自己の心的閾
◦ 動物の心 植物の心 ◦非自己とエス
付註:「それが考える」と設計原理の転換
小括
▪結語とこれから
あとがき
【新書のための論考】近代学問体系の転移と日本の述語的体系